心理カウンセラーや心理士は、子どもの心のケアや発達支援に関わる専門職として、多くの現場で必要とされています。学校や病院、児童相談所など、活躍の場は幅広く、「子どもの成長を支えたい」という思いからこの職を目指す人も少なくありません。
しかし一方で、「心理カウンセラーの仕事はやりがいがあるけれど、実際どのくらいの年収なの?」「働く場所によって収入は違うの?」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
この記事では、子ども心理カウンセラーや心理士の平均年収をはじめ、職場別の収入の違いや、年収を上げるためのポイントをわかりやすく解説します。これから心理職を目指す方や、キャリアアップを考えている方はぜひ参考にしてください。
子ども心理カウンセラー・心理士の平均年収とは
子どもを対象とする心理カウンセラーや心理士の平均年収は、おおよそ350万円〜450万円程度が目安です。心理職全体で見ると、国家資格「公認心理師」や「臨床心理士」を持つ人の多くがこの範囲に収まります。ただし、勤務先や雇用形態、経験年数によって収入には大きな差があります。
特に子どもを支援する分野では、学校や自治体などの公的機関に勤務するケースが多く、安定した収入が得られる一方で、非常勤や契約職員として働く人も多いため、年収がやや低めになる傾向があります。また、同じ心理職でも、医療機関や民間カウンセリングルーム、NPOなどでは給与体系が異なり、平均額に幅が生じます。
心理カウンセラーの年収は、単に経験年数だけでなく、どの職場で・どんな形で働くかによって変わるのが特徴です。次の章では、職場ごとに年収の目安と特徴を詳しく見ていきましょう。
職場別の年収比較
心理カウンセラーや心理士といっても、働く場所によって仕事内容も収入も大きく異なります。ここでは、代表的な職場ごとの年収の目安と特徴を見ていきましょう。
① 学校(スクールカウンセラー)
文部科学省の支援制度のもと、多くの小中高校で配置が進んでいるスクールカウンセラー。
年収の目安は300万〜500万円前後です。非常勤として週1〜3日勤務のケースが多く、1校あたりの勤務時間は限られます。そのため、複数校を掛け持ちして働く人もいます。安定性はあるものの、契約期間が年度ごとに更新される場合が多いため、長期的な収入計画は立てにくい点もあります。
② 児童相談所・自治体(公務員心理職)
児童相談所や自治体で働く心理士は、地方公務員として採用されるケースが一般的です。
年収は400万〜600万円前後で、経験年数に応じて昇給も見込めます。雇用が安定しているため、心理職の中でも人気の高い勤務先です。公務員試験や心理職採用試験に合格する必要がありますが、福利厚生やボーナスも充実しています。
③ 医療機関(病院・クリニック)
病院や精神科クリニックなど医療機関で働く心理士の年収は、350万〜550万円前後です。
医師や看護師と連携しながら、子どもの発達障害や心の病気のケアを行います。臨床心理士や公認心理師の資格が求められることが多く、経験を積むほど専門性が評価されやすい職場です。ただし、医療機関の規模や勤務時間によって給与に差があります。
④ 民間カウンセリングルーム・発達支援施設
民間の発達支援センターやカウンセリングルームで働く場合、年収は300万〜450万円前後が一般的です。
小規模な事業所では給与水準が低めな一方で、経験を積むことで自費カウンセリングや講座開催など、独自の収益を得る道もあります。個人のスキルや実績が直接反映されやすい職場でもあります。
⑤ フリーランス・独立開業
個人で開業したり、オンライン相談を行う心理士の年収は300万〜800万円以上と幅広く、実力次第です。
SNSやWebサイトを活用して集客したり、企業や教育機関と契約して外部カウンセラーとして活動する人も増えています。自由度が高い一方で、収入の安定性に欠けるため、マーケティングや営業力も必要になります。
| 職場 | 年収の目安 | 雇用形態の傾向 | 主な特徴・ポイント |
|---|---|---|---|
| 学校(スクールカウンセラー) | 約300万〜500万円 | 非常勤が多い(週1〜3日勤務) | 公的制度に基づく配置。複数校掛け持ちが一般的。年度ごとの契約更新が多い。 |
| 児童相談所・自治体(公務員心理職) | 約400万〜600万円 | 正規職員(地方公務員) | 安定性・福利厚生が高く人気。昇給や賞与あり。採用試験が必要。 |
| 医療機関(病院・クリニック) | 約350万〜550万円 | 常勤・非常勤あり | 臨床心理士・公認心理師資格が必須のことが多い。専門性が評価されやすい。 |
| 民間カウンセリングルーム・発達支援施設 | 約300万〜450万円 | 正社員・契約・委託など多様 | 施設により給与差が大きい。経験に応じて自費カウンセリングなどで収入増も可能。 |
| フリーランス・独立開業 | 約300万〜800万円以上 | 個人事業・業務委託 | 自由度が高い反面、収入の安定性に課題。SNSやオンライン相談で集客するケースも。 |
子ども心理カウンセラーや心理士の収入を左右する要素とは
子ども心理カウンセラーや心理士の年収は、同じ職種でも人によって大きく差があります。その理由は、資格・経験・働き方といった複数の要素が関係しているからです。ここでは、収入に影響を与える主なポイントを解説します。
資格の種類(公認心理師・臨床心理士など)
心理職の中でも、「公認心理師」や「臨床心理士」などの国家資格・認定資格を持つかどうかで、給与水準が変わります。
特に公認心理師は国家資格であり、自治体や医療機関の採用条件になっていることが多く、資格を持つことで採用枠が広がり、初任給や昇給にも有利です。臨床心理士の場合も、専門性が高く評価されやすく、民間施設や病院での報酬アップにつながるケースがあります。
経験年数と専門分野
心理職は経験を重ねるほど、信頼性と実績が収入に反映されやすい職業です。特に発達障害支援やトラウマケアなど、特定の専門分野に強みを持つ人は、相談件数が増えたり、研修講師や監修の依頼が入るなど、キャリアの幅が広がります。
また、長年勤続して昇格したり、チームリーダー・スーパーバイザーとして責任ある立場を担うことで、年収アップが期待できます。
雇用形態と働き方の違い
心理カウンセラーには、常勤・非常勤・業務委託・フリーランスなどさまざまな働き方があります。
公的機関や病院の常勤職員は安定した収入を得られる一方、非常勤や委託契約の場合は時給・日給制が多く、勤務日数によって収入が大きく変わります。
また、最近ではオンラインカウンセリングやSNSを活用した個人相談を行う人も増えており、働く場所に縛られない新しい形の収入源として注目されています。
このように、心理職の収入は「資格・経験・働き方」の組み合わせによって大きく異なります。自分のキャリアの方向性を明確にして、どの要素を伸ばすかを意識することで、安定した収入とやりがいの両立を目指すことができます。
年収アップを目指すには
心理カウンセラーや心理士として安定した収入を得るには、資格取得や経験を積むことに加えて、戦略的にキャリアを築く意識が大切です。ここでは、年収アップにつながる具体的な方法を紹介します。
資格取得によるキャリアアップ
心理職の中でも、「公認心理師」や「臨床心理士」などの資格を取得することで、採用や昇給のチャンスが広がります。特に公認心理師は国家資格であり、医療機関・教育現場・行政機関の採用条件に指定されている場合が多いです。
資格取得によって専門性を証明できるため、正規職員としての採用や契約更新の際の優遇にもつながります。また、資格を持つことで講師・研修担当・監修業務など、収入源を多角化できる点も魅力です。
スキルの多様化(発達支援・教育・オンライン相談など)
心理職の仕事は「カウンセリング」だけに限りません。発達支援、教育相談、家族療法、企業メンタルヘルスなど、幅広い分野に応用できます。
複数のスキルを持つことで、仕事の依頼先や活躍の場が増え、結果的に収入の安定と上限アップが期待できます。
近年ではオンラインでのカウンセリングや、SNSを通じた心理コラムの発信など、新しい形の活動も広がっています。
副業・オンラインカウンセリングの活用
働き方が多様化する中で、副業として心理相談を行う人も増えています。
たとえば、平日は学校や医療機関で勤務し、週末にオンラインカウンセリングを提供したり、心理教育のセミナーを開催するなどの形です。
Zoomやカウンセリングプラットフォームを使えば、場所に縛られずに活動できるため、本業を維持しながら収入を増やすことも可能です。
まとめ
子ども心理カウンセラーや心理士の年収は、勤務先や資格、働き方によって大きく異なるのが現実です。学校や自治体などの公的機関では安定した収入が得られる一方で、民間施設やフリーランスとして働く場合は、実力次第で収入に差が出やすい傾向があります。
大切なのは、「どこで働くか」だけでなく、「自分がどんな形で子どもと向き合いたいか」を明確にすることです。資格取得や専門スキルの習得を通じて、自分の強みを高めていけば、収入だけでなく、やりがいのあるキャリアを築くことができます。
心理カウンセラーという仕事は、数字以上に人の成長や心の回復に関わる尊い職業です。収入面を正しく理解しつつ、“続けられる働き方”と“自分らしい貢献の形”を見つけることが、長く活躍するための第一歩と言えるでしょう。


