働き方改革やリモートワークの普及を背景に、副業を解禁する企業が増え、個人の働き方も大きく変わり始めています。
しかし「副業でどれだけ稼げるのか」「会社に知られずにできるのか」といった短期的な視点にとどまると、長期的なキャリア形成を見失ってしまうかもしれません。
本記事では、最新の副業事情や統計データを踏まえながら、単なる「副業」ではなく「複業」という視点から、これからの時代にふさわしい働き方を考えていきます。
現在の副業事情
副業をめぐる環境はここ数年で大きく変化しています。企業が副業を容認する動きが広がる一方で、実際に副業に取り組む個人の数も着実に増加しています。社会全体として「副業が当たり前」という空気が少しずつ醸成されており、今後ますます身近な働き方として定着していくことが予想されます。
副業OKは本当に増えている?
近年、多くの企業が従業員の副業を認める方向に舵を切っています。2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表して以降、副業を容認する企業は増加傾向にあります。
パーソル総合研究所の調査(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/sidejob3/)によると、2023年時点で60.9%の企業が副業を容認(全面または条件付き)しており、2018年から着実に伸びています。ただし、実際に副業を受け入れている企業は24.4%にとどまり、制度と現実の間には大きなギャップがあることも明らかです。

副業をしている人はどのくらいいる?
総務省の「就業構造基本調査」(https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kyouyaku.pdf)によれば、2022年時点で副業を持つ人は305万人(非農林業ベース)に達しており、2017年から約60万人増加しています。特に40代以降の層が副業者数を押し上げており、キャリア後半での収入補填やスキル活用の需要が高まっていることがうかがえます。
副業は「一部の意識の高い人だけが行うもの」から、「誰にとっても身近で現実的な働き方の選択肢」へと変わりつつあるようです。
副業で稼げるのはどんな副業なのか?
副業を始める人が増えているとはいえ、実際に収入につながる副業とそうでない副業の差は大きいのが現実です。特に短期的に生活費を補うために取り組むものと、長期的に資産やキャリアを築くものでは選ぶべき方向性が異なります。ここでは、近年注目されている「稼ぎやすい副業」の特徴を整理してみましょう。
自分の時間を切り売りするタイプの副業
もっとも身近なのは、労働時間を直接お金に換えるタイプの副業です。アルバイトや派遣、デリバリー配達などがこれにあたり、すぐに現金収入を得られる反面、働いた時間以上のリターンを得ることは難しいという側面があります。短期的に収入を増やしたい人にとっては有効ですが、長期的なスキル蓄積やキャリア形成にはつながりにくい傾向があります。
スキル提供型の副業
クラウドソーシングやオンラインプラットフォームを活用して、ライティング、デザイン、プログラミング、動画編集などのスキルを提供する副業は拡大しています。ここでは単なる時間労働にとどまらず、専門性が高いほど単価が上がりやすく、継続案件につながることも多いのが特徴です。特にAIや自動化ツールを組み合わせた業務効率化のスキルは、企業からの需要が急速に高まっています。
ただ、これについても基本的には自分の時間を切り売りするタイプの副業になるのかと思います。
デジタル資産型の副業
最も将来性があるのは、自分の知識やコンテンツを資産化する副業です。ブログやYouTubeといったメディア運営、オンライン教材の販売、テンプレートやツールの提供などは、時間をかけて構築すれば収益が積み上がる仕組みを作ることができます。一度仕組みを整えれば、自分が働いていない時間にも収益が発生する「ストック型」の副業となり、まさに時間のレバレッジを効かせる働き方といえるでしょう。
一方でSNS系のデジタル資産についてはやはり継続的な情報発信をしていないと徐々に価値がさがってしまい、最終的には稼げないコンテンツとなってしまうので、これらのデジタル資産については常に手入れができる体制を整えて置く必要はあります。
副業の考え方として複業がよいのかも
「副業」という言葉には、本業がありその“余力”で取り組む仕事というニュアンスがあります。しかし、現代の働き方を考えると、副業は単なるサブ的な存在ではなく、複数の仕事を組み合わせてキャリアをつくる「複業」として捉えたほうが実態に近いのではないでしょうか。ここでは、副業から複業へと発想を広げる視点を整理します。
複業はリスク分散になる
ひとつの会社や収入源に依存する働き方は、景気変動や人員整理など外部要因に左右されやすいリスクを抱えています。複数の仕事を持つことで、収入源を分散させることができ、万が一のリスクに備えやすくなります。特に不安定な時代においては、複業は「保険」のような役割を果たします。
複業は学びの循環を生む
本業で得た知識やスキルを副業で活用し、副業で得た経験を本業に還元することで、相乗効果が生まれます。たとえば、会社でのマーケティング知識を活かして個人ブログを成長させ、その知見をまた会社の業務に活かす、といった循環です。複業はスキルを「横展開」しやすい働き方といえます。
自分の軸を見つけるきっかけになる
複業を続けていくと、自分がどんな分野に強みや情熱を持っているのかが見えてきます。クライアントワークを通じてニーズを掴み、自分の事業として形にする流れも自然に生まれてきます。これは単なるお金稼ぎ以上に、自分自身の生き方やキャリアを主体的に選択する大きな意味を持っています。
今後複業はさらに増加していく
複業が単なる一時的な流行ではなく、今後さらに広がっていくと考えられるのは、社会や経済の構造的な変化が背景にあるからです。物価上昇や賃金の伸び悩み、そして政府の政策的な後押しなど、複数の要因が複業を後押ししています。ここでは、その主な理由を見ていきましょう。
インフレが進む一方で賃金が伸びない
近年、日本の消費者物価指数(CPI)は前年比2〜3%台で推移しており、生活にかかるコストは着実に上昇しています。一方で、実質賃金はここ数年マイナスが続き、物価上昇に追いついていません。家計のバランスを保つために、給与所得だけでは足りず、複業によって収入を補う動きが広がっています。
政府の「副業促進」スタンス
2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表して以降、企業の副業容認は進んできました。これは単に個人の選択肢を広げるためだけでなく、企業全体の労働力の柔軟な活用、そして社会全体の生産性向上を狙った政策でもあります。今後も政府は、副業・複業を「働き方改革の一部」として推進していくでしょう。
税制・申告ルールによる可視化
副業で得た収入は、基本的に確定申告や住民税申告の対象になります。これにより、国や自治体は副業収入をしっかりと把握でき、税収拡大にもつながります。こうした仕組みの存在自体が、今後「副業をやる人が増える」方向に社会を動かしているともいえます。つまり複業は、個人だけでなく国にとってもメリットのある動きになっているのです。
今後していくべき複業スタイルとは
これからの時代に複業を考える際には、単に目の前の収入を得るだけではなく、将来につながる仕組みづくりを意識することが重要です。特に「時間をどう使うか」「どの段階で自分の事業にシフトするか」が、長期的な成功を分けるポイントになります。ここでは、これから取り組むべき副業スタイルの方向性を整理します。
時間のレバレッジが効く仕事を選ぶ
短期的な労働収入にとどまる副業では、働ける時間の上限が収入の限界になります。今後は、デジタル資産や仕組みを活用して「自分が働いていない時間にも収入が生まれる」仕事にシフトしていくことが鍵です。具体的には、ブログやYouTubeといったメディア運営、テンプレートや教材の販売、あるいはAIや自動化ツールを使った仕組み化が挙げられます。
クライアントワークから自分の事業へ
最初は受託案件やアルバイトといった「クライアントワーク」から始める人が多いでしょう。これは安定したキャッシュフローを得るには有効ですが、ずっと続けていては労働集約から抜け出せません。受託で得た知識やノウハウを整理し、共通化・仕組み化することで、自分自身の事業に変換していく流れを意識することが大切です。
ポートフォリオ型で考える
今後の複業は「ひとつに依存しない」ことが大前提になります。例えば、平日はクライアントワークで安定収入を確保し、休日には自分のメディアや商品開発に時間を充てる、といった二層構造が理想的です。こうしたポートフォリオ型の働き方は、リスクを分散しながら収入とスキルの両方を伸ばすことができ、持続的な複業スタイルを築くことにつながります。
まとめ
副業を取り巻く環境は、企業の容認や政府の後押し、そして社会全体の価値観の変化によって大きく広がりを見せています。すでに副業者数は300万人を超え、働き方の一部として定着しつつあります。しかし、その中身は単なる収入補填にとどまるものから、将来のキャリアや資産形成へと直結するものまで、幅広く存在しています。
これからの時代に重要なのは、「副業をするかどうか」ではなく、「複業をどう生きるか」です。単なる時間労働ではなく、複業として複数の仕事を組み合わせ、資産化や仕組み化を意識することで、働き方そのものが豊かに変わっていきます。副業を選ぶことは収入を増やすだけでなく、自分の生き方やキャリアをデザインする行為でもあるのです。
副業をめぐる社会的な追い風が強まる中で、私たちはどのようなスタイルで仕事と向き合うのか。今こそ、自分自身に合った「複業の設計」を考えるタイミングに来ているのではないでしょうか。


